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エンタルピー

 エンタルピーとは以下の式で定義される状態量のことである。 \begin{eqnarray} H = U + pV \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (1) \end{eqnarray} ここで、\( H \)はエンタルピー、\( U \)は内部エネルギー、\( p \)は圧力、\( V \)は体積である。 この式を見ただけではエンタルピーが何か分からない。 詳しい物理的な意味は色々な教科書で説明されているので、このページではエンタルピーとは「内部エネルギーと圧力、体積で表される状態量」と思っておいて欲しい。 どうして式(1)のようにエンタルピーが定義されたのかは下で示すように、「このように定義すると定圧比熱が簡単に記述できるようになるから」と覚えておけば十分だと思う。 また、エンタルピーは系の乱雑さを示す状態量であるエントロピーと名前が似ているので、よく間違われるが両者は全く違う。
 ではまず、エンタルピーを紐解いて行くためにエンタルピーの微小変化を考える。 式(1)の微小変化は \begin{eqnarray} dH = dU + Vdp + pdV \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (2) \end{eqnarray} となる。定圧条件下では式(2)の右辺第2項が0となるので、 \begin{eqnarray} dH = dU + pdV \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (3) \end{eqnarray} となる。この式を見て思い出す人もいると思うが、式(3)は \begin{eqnarray} d'Q = dU + pdV \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (4) \end{eqnarray} と同じ式となる。これは\( d'Q \)は定圧条件下では状態量と同じように振る舞うことを意味している。 この特徴を利用することで、定圧変化では \begin{eqnarray} \frac{d'Q}{dT} = \frac{dH}{dT} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (5) \end{eqnarray} と表すことができるのである。
 次に、定圧比熱は以下のように表すことができた。 \begin{eqnarray} C_p = \frac{d'Q}{dT} = \left( \frac{\partial U}{\partial T} \right)_V + \left\{ \left( \frac{\partial U}{\partial T} \right)_T + P \right\} \left( \frac{\partial V}{\partial T} \right)_P \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (6) \end{eqnarray} この式は特に右辺が複雑で、覚えていられない。 簡単に表すことができる定積比熱と大きく違う。 しかし、エンタルピーを導入することで、複雑な式(6)は \begin{eqnarray} C_p = \frac{dH}{dT} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (7) \end{eqnarray} ととても簡単な式に書き換えることができるのである。
最後に、この式(7)で定圧比熱を表されることはあまりないので、偏微分を用いた式に変形をする。 エンタルピーの全微分は、エンタルピー\( H \)が圧力\( p \)と温度\( T \)の関数であるとすると、 \begin{eqnarray} dH = \left( \frac{\partial H}{\partial T} \right)_p d T + \left( \frac{\partial H}{\partial p}\right) dp \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (8) \end{eqnarray} となる。ここで、定圧変化である\( dp=0 \)を代入すると、 \begin{eqnarray} \frac{dH}{dT} = \left( \frac{\partial H}{\partial T} \right)_p \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (9) \end{eqnarray} を得ることができる。従って、式(7)は \begin{eqnarray} C_p = \left( \frac{\partial H}{\partial T} \right)_p \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (10) \end{eqnarray} となるのである。 いずれにせよ、エンタルピーを導入することで、定圧比熱の式は劇的に簡単に記述することができるようになるのである。

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