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プラズマ近似の妥当性

プラズマ物理学の問題を解く場合や現象を理解する際に、「プラズマは電気的に中性である」という条件を用いることが多い。 つまり、電子とイオンの数密度が等しく\( n_e = n_i \)という条件を使う。 このことをプラズマ近似と呼ぶ。 このページではプラズマ近似がどの程度成り立っているのかを検証する。

 線形化されたポアソン方程式は、イオンと電子の密度が異なり(\( n_e \ne n_i \))、\( {\bf E}_1 = - \nabla \phi_1 \)と表すことができるとすると \begin{eqnarray} \nabla \cdot {\bf E}_1 = \frac{\partial^2}{\partial {\bf r}^2} \phi_1 = k^2 \phi_1 = \frac{ e(n_{i1} - n_{e1}) }{ \epsilon_0 } \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (1) \end{eqnarray} となる。ここで線形化について不明な場合はプラズマ周波数のページを読んでほしい。 電子密度は磁力線に沿った流体ドリフトを求めた際の関係式 \begin{eqnarray} n_{e1} = \frac{e \phi_1}{k_B T_e} n_0 \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (2) \end{eqnarray} から得ることができる。 この式を(1)式に代入すると、 \begin{eqnarray} \frac{en_{i1}}{\epsilon_0} - \frac{e^2 \phi_1}{\epsilon_0 k_B T_e} n_0 = k^2 \phi_1 \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (3) \end{eqnarray} を得るのである。 ここで、デバイ長 \begin{eqnarray} \lambda_D = \left( \frac{\epsilon_0 k_B T_e}{e^2 n_0} \right)^{1/2} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (4) \end{eqnarray} を使うことで、式(3)は \begin{eqnarray} \frac{en_{i1}}{\epsilon_0} \lambda_D ^2 = (k^2 \lambda_D^2 + 1 ) \phi_1 \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (5) \end{eqnarray} と書き直すことができる。
 次に、イオンの連続の式から \begin{eqnarray} n_{i1} = \frac{k}{\omega}n_0 v_{i1} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (6) \end{eqnarray} の方程式を得ることができる。 式(5)と式(6)を線形化されたイオンの運動方程式である、 \begin{eqnarray} - i \omega Mn_0 v{i1} = - en_0 ik \phi_1 - \gamma_i ik_B T_i kn_{i1} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (7) \end{eqnarray} に代入する。ここで、線形化されたイオンの方程式の導出が不明な場合はイオン音波のページを参考にして欲しい。 \begin{eqnarray} \omega M n_0 v_{i1} = \left( \frac{e^2 n_0 \lambda_D^2}{\epsilon_0(k^2 \lambda_0^2 + 1)} + \gamma_i k_B T_i \right) \frac{k^2}{\omega}n_0 v_{i1}\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (8) \end{eqnarray} ここで、\( v_{i1} \ne 0 \)として式(8)をもう少し整理してみる。 \begin{eqnarray} \omega^2 = \left( \frac{e^2 n_0 \lambda_D^2}{\epsilon_0(k^2 \lambda_0^2 + 1)} + \gamma_i k_B T_i \right) \frac{k^2}{M}\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (9) \end{eqnarray} となる。括弧内第1項の分母の\( \lambda_D \)を式(4)を使って戻してやることで、 \begin{eqnarray} \frac{\omega}{k} = \left( \frac{k_B T_e}{M} \frac{1}{k^2 \lambda_D^2 + 1} + \frac{\gamma_i k_B T_i}{M} \right)^{1/2}\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (10) \end{eqnarray} となる。この式はイオン音波の式と\( 1/(k^2 \lambda_D^2 + 1) \)だけ異なるのである。 これが\( n_e \ne n_i \)と仮定した際の誤差となるのである。 実際の場合にはデバイ長\( \lambda_D \)は極めて小さいので、短い波長の波(大きな\( k \)の波)を除けばプラズマ近似は多くの場合適応できるのである。

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