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対流微分


 磁場と電場が印加された系での粒子の運動を考える。 磁場と電場が時間変化しないものとして、1つの粒子に対する運動方程式は以下のように与えられる。 \begin{equation} m \frac{d}{dt} {\bf v} = q \left( {\bf E} + {\bf v} \times {\bf B} \right) \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (1) \end{equation} 粒子同士は衝突を起こさず、熱運動はないと仮定すると、すべての粒子は同じ方向に同じ速度で動く。 つまり、密度\(n\)の流体の速度を\( {\bf u} \)とすると、式(1)の両辺に\( n\)を掛けることで流体の運動方程式が得られ、 \begin{equation} m n \frac{d}{dt} {\bf u} = q n \left( {\bf E} + {\bf u} \times {\bf B} \right)\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (2) \end{equation} となる。
 式(2)の速度\( {\bf u} \)の時間変化だけを見ている場合、つまり\( {\bf u}(t) \)の時は粒子一個の速度変化を見ているに過ぎない。 これは、式(2)を表す座標系が粒子の速度で動く座標系であることを意味している。 プラズマ物理学で利用しやすいような運動方程式を得るためには、座標系を固定して、ある時間、ある位置における粒子の速度を知ることができる運動方程式を得る必要がある。 例えるならば、粒子の運動に沿った座標系の場合は、川に船を浮かべてその流れに身を任せながら常に同じ粒子の速度を観測していることになる。 実際は川の河川敷からあらゆる場所、時間の川の水の速度を知る必要があるのである。 こういった場合は、粒子の速度に位置の情報を加えてやる必要がある。 まずは\( x \)軸だけを拡張した1次元で考えると、\( {\bf u}(x,\ t) \)となる。 ここでは、一般化して、変数を\( {\bf G}(x,\ t) \)とする。 すると、式(2)の全微分は以下のように書き換えられる。 \begin{equation} \frac{d}{dt} {\bf G} = \frac{\partial {\bf G}}{\partial t} + \frac{d {\bf u}}{d x}\frac{\partial {\bf G}}{\partial t} = \frac{\partial {\bf G}}{\partial t} + u_x \frac{\partial {\bf G}}{\partial x} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (3) \end{equation} となる。 これは単なる全微分と偏微分の関係式から導かれる。 式(3)を三次元(\(x,\ y,\ z\))に拡張すると以下の様に表すことができる。 \begin{eqnarray} \frac{d}{dt} {\bf G} &=& \frac{\partial {\bf G}}{\partial t} + u_x \frac{\partial {\bf G}}{\partial x} + u_y \frac{\partial {\bf G}}{\partial y} + u_z \frac{\partial {\bf G}}{\partial z} \\ &=& \frac{\partial {\bf G}}{\partial t} + \left( u_x \frac{\partial}{\partial x} + u_y \frac{\partial}{\partial y} + u_z \frac{\partial}{\partial z} \right) {\bf G} \\ &=& \frac{\partial {\bf G}}{\partial t} + \left( {\bf u} \cdot \nabla \right) {\bf G}\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (3) \end{eqnarray} この式(3)の右辺第二項は移流項と呼ばれる。 話を速度に戻して、\( {\bf G} = {\bf u} \)として、式(3)を式(2)に代入すると、 \begin{equation} m n \left\{ \frac{\partial {\bf u}}{\partial t} + \left( {\bf u} \cdot \nabla \right) {\bf u} \right\} = q n \left( {\bf E} + {\bf u} \times {\bf B} \right) \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (4) \end{equation} と固定された座標系での流体の運動方程式を記述できるのである。

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