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 断熱不変量


 プラズマの運動を理解していく上で重要なことの一つに断熱不変量がある。 断熱不変量とは、周期的運動をする場合に、その系の変化が周期よりも充分にゆっくりである時、その1周期に渡って実行される作用積分 \begin{eqnarray} \oint p\ dq\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (1) \end{eqnarray} は常に一定に保たれるというものである。ここで、\( p \)は運動量、\(q\)は一般化された座標系である。 例えば、プラズマが一様な磁場中におかれたとする。 磁場に垂直な方向に初速度を持っていれば、磁場はローレンツ力によって円運動を開始する。 磁場が一様な限りは、プラズマは常に同じ位置で円運動を続ける。 その円運動の1周分、つまり1周期分の運動量を式(1)を使って\(\theta\)で積分することで磁気モーメントを得ることができる。 この場合、一般化された座標系が角度になるので、一般化された運動量は角運動量に置き換える。 (磁気モーメントの詳細は磁気ミラーのページを参照して欲しい) ここで、\( \theta \)は円運動の中心を原点として、プラズマの位置ベクトルと\(x\)の成す角度である。 このようにして、例えば磁場が変化したとしても、プラズマは磁場の増減に伴ってラーモア半径を増減させ磁気モーメントを一定に保つことがわかる。 この時、式(1)から導かれた磁気モーメントは断熱不変量である。
 断熱不変量を導出する上で一つ重要なことがある。 それは、「系の変化が周期的運動に対して充分ゆっくりである」ということである。 先ほどの例で言えば、磁場の変化がプラズマの円運動(サイクロトロン運動)の周期に対してゆっくりでないといけない。 どのくらいゆっくりであればいいのであろうか。 それを考えるために式(1)に戻る。 式(1)の作用積分(円積分)\( \oint \)は閉じられた経路を意味している。 先ほどの場合で言えば円運動の軌道である。 磁場が変化すると、円運動のラーモア半径も変化してしまい、厳密には閉じた系ではなくなる。 ここが重要で、「磁場は変化するのだが、1周期でラーモア半径はほとんど変わらず、その軌道を円に近似できる」と言うのでが「ゆっくりとした変化」の条件となるのである。
 このような断熱不変量は、プラズマ物理でのプラズマの運動を理解する際に重要な役割を果たす。 言い換えれば、断熱不変量を使えば、複雑な運動でも簡単に解を得られる場合があるのである。 プラズマには3つの周期運動に対して、3つの断熱不変量が存在する。 ここでは別のページでその3つを見ていこうと思う。
 ちなみに、断熱不変量は周期的運動であれば式(1)から導くことができる。 周期的運動の代表的なものに調和振動子(単振り子)がある。 この単振り子の支店に滑車を付けて、糸をどんどん短くする時、振り子の力学的エネルギー\( E \)と振り子の角周波数\( \omega \)の間には、 \begin{eqnarray} \frac{E}{\omega} = Const. \end{eqnarray} と言う関係ある。 これは振り子の糸を短くして、振り子の位置エネルギーを増やすと、振り子の周期も同時に大きくなるということを意味している。 このようにプラズマ力学だけでなく他の物理の分野でも断熱不変量は重要なのである。 この振り子の断熱不変量についての詳細は、調和振動子の断熱不変量のページを参考にして欲しい。

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