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ベクトルの掛け算 内積・外積

カテゴリー:物理数学


ベクトルの内積と外積についてみていこうと思う。

掛け算とは、あるものを何倍にするかである。

しかしベクトルは大きさの他に、「向き」を持っている。

このページでは、「向き」を持つベクトル同士の掛け算について説明していこうと思う。

「大きさ」だけを持つスカラーと「向き」と「大きさ」を持つベクトルの掛け算については、「ベクトルの掛け算 スカラーとベクトル」のページを参考にして欲しい。

ます、ベクトルとベクトルの掛け算は2種類ある。

それぞれ、内積外積と呼ばれ異なった性質を持つ。

内積と外積の詳しい説明は以下に示しておく。

また、最後に内積と外積の違いについて少し述べておく。



内積(スカラー積)


ベクトルの内積は、2つのベクトルの大きさの掛け算と、2つのベクトルの成す角\( \theta \)のコサインを掛け合わせた値である。

\begin{eqnarray} {\bf A} \cdot {\bf B} = |{\bf A}||{\bf B}| \cos \theta \end{eqnarray}

内積の場合は掛け算の記号に”・”を使うことが決まりである。成分で表すと以下のようになる。

\begin{eqnarray} {\bf A} \cdot {\bf B} = A_x B_x + A_y B_y + A_z + B_z \end{eqnarray}

では、この内積が意味するものは何か?

それは仕事である。

わかりやすい様に図1の様な、物質を水平から\( \theta \)だけ、上方向に傾けて力\( {\bf F} \)で距離\( d \)だけ引っ張った場合を考える。

この物質がされる仕事\( W \)は

\begin{eqnarray} W = {\bf F} \cdot {\bf d} = |{\bf F}||{\bf d}| \cos \theta \end{eqnarray}

となる。

ここで、\(\cos\)が掛かっていることからもわかる様に、互いのベクトルの成す角が90°である場合の内積は必ず0になる。

これはベクトルの直交条件または垂直条件と言う。

ベクトルの内積で得られるのは「大きさ」なので、結果は数(スカラー量)になるためスカラー積とも呼ばれる。

内積の基本的性質(交換則、分配則など)を記述しておく。


\begin{eqnarray} {\bf A} \cdot {\bf B} &=& {\bf B} \cdot {\bf A}\\ {\bf A} \cdot ( {\bf B} + {\bf C} ) &=& {\bf A} \cdot {\bf B} + {\bf A} \cdot {\bf C} \\ a ({\bf A} \cdot {\bf B} ) &=& (a {\bf A} ) \cdot {\bf B} = {\bf A} \cdot (a {\bf B} \end{eqnarray}

fig11.png
図1. 仕事



外積(ベクトル積)


\begin{eqnarray} {\bf C} = {\bf A} \times {\bf B} = | {\bf A} | | {\bf B} | \sin \theta {\bf \hat{C}} \end{eqnarray}

\( {\bf \hat{C} } \)は\( {\bf C} \)方向の単位ベクトルである。

つまり、

そのため、外積のことをベクトル積とも言う。


fig12.png
図2.


\( {\bf C} \)の大きさは図2に示す、ベクトル\( {\bf A} \)とベクトル\( {\bf B} \)で作る平行四辺形の面積と一致する。

\( {\bf C} \)の向きはベクトル\( {\bf A} \)とベクトル\( {\bf B} \)が作る平面(この平行四辺形の面と同じ)に垂直な向きになる。

垂直な向きは2つ存在するが、右ねじの法則(右手系)に従った向きがベクトル\( {\bf C} \)の向きとなる(図2参照)。

もっと詳しく述べると、ベクトル\( {\bf A} \)の方向からベクトル\( {\bf B} \)の方向にネジを締めるドライバーを捻って進む方向がベクトル\( {\bf C} \)の方向となる。

物理学では主にトルクやローレンツ力を表す場合に用いられる。

内積はスカラー量となるので、それぞれのベクトルが計算上では、順不同(交換則が成り立つ)であったが、外積の場合はベクトルで表され、その向きは右ネジの法則に従うので、 \begin{eqnarray} {\bf A} \times {\bf B} \neq{\bf B}\times{\bf A} \end{eqnarray} であり、勝手にベクトルを入れ替えて考えてはいけない。

以下にベクトルの外積の基本的な法則を記述しておく。 \begin{eqnarray} {\bf A} \times {\bf B}=-{\bf B} \times {\bf A}\\ {\bf A}\times({\bf B}+{\bf C})={\bf A}\times{\bf B}+{\bf A}\times{\bf C}\\ (a {\bf A} ) \times {\bf B} = {\bf A}\times (a {\bf B}) \end{eqnarray}

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