内積と外積の違い
カテゴリー:物理数学
内積と外積の違いについて説明していこう。
なかなか説明に困るのだが、内積は
\begin{equation}
{\bf A} \cdot {\bf B} = |{\bf A}||{\bf B}| \cos \theta
\end{equation}
と表される。
これを言葉で表すと「ベクトルAをベクトルBに投影して|B|倍した大きさ」である。
つまり、垂直の場合はベクトルBに全く投影されないので、内積は0となる。
さらに内積で得られるのは「大きさ」なので、結果は「数」つまり、スカラー量として得られるのである。
一方、外積は、
\begin{equation}
{\bf C} = {\bf A} \times {\bf B} = | {\bf A} | | {\bf B} | \sin \theta {\bf \hat{C}}
\end{equation}
と表され、「ベクトルAとベクトルBが作る平面に直交するベクトルC」によって表される。
内積のように「投影」などわかりやすい言葉を使って説明はできないが、外積を計算するとベクトル量が得られる。
つまり、内積と外積の違いの1つとしてその解がスカラーになるか、ベクトルになるかということが言えるのである。
ここまで説明してもピンとこないかもしれないが、内積と外積は物理の現象を数式化するときに非常に便利である。
例えば、上に示したように、テーブルに置いた物体を引いて動かす時、テーブル平行に力を加えれば最も効率的に物を動かすことができる(\( \cos \theta = 1\))。
しかし、テーブルの表面と角度を持って引いてしまうとその分、動かす効率は小さくなる。これを表す場合に内積は便利である。
外積が便利に働く場合で最も良い例はローレンツ力だろう。
高校では、ローレンツ力は
\begin{eqnarray}
|{\bf F}| = q |{\bf v}| |{\bf B}| \sin \theta
\end{eqnarray}
と習ったと思う。ここで、\( F \)は力、\( q \)は電荷量、\( v \)は電荷の速度、\( B \)は磁場である。
そして、\( \theta \)は この時、\( F \)は速度\( v\)と磁場\( B \)に垂直に働くという性質がある。
これをベクトルを使って示すと、
\begin{eqnarray}
{\bf F} = q {\bf v} \times {\bf B}
\end{eqnarray}
となんともスマートに表されるのである。
物理には、「沿う力」や「垂直に働く力」というものが山ほどある。
これらの数式をスマートに表す時に内積や外積が非常に役立つのである。