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残り物には福があるのか

カテゴリー:数学A


くじを引く時などに「残り物には福がある」なんて言って、引く順番が最後になった人を元気づけたりすることがある。

実は、これは日本だけでなく、英語にも「There is luck in the last helping.」という「最後の一杯に幸運あり」という言葉があって、 ほぼ「残り物には福がある」と同じ意味である。

こんな風に海外でも信じられているように、実際くじ引きで最後に引く人は当たりを引く確率が高いのだろうか?

これは高校の数学の知識で簡単に証明できるので、実際に「数学的」に「残り物には福がある」と言う言葉を検証してみようと思う。



 

10本のくじがあり、当たりが3本含まれていた場合


このくじをA, B, C, Dの4人が引くとする。

くじを引く順番はわかり易いように、A, B, C, Dの順にする。

この時、Dが当たりくじを引く確率が高ければ、「残り物には福がある」ということを証明したことになる。

ちなみに引いたくじは戻さないようにする。

1回目にくじを引くことができるAが当たる確率は簡単に、


\begin{eqnarray} \frac{3}{10} \end{eqnarray}

と予想できる。

では、2人目はどうなるだろう?Aが当たりくじを引いたらBが当たる確率は下がるのだろうか?

では当たりを引く確率が順番によって異なるのか見ていこうと思う。


まず、10本のくじを4人で引くすべての場合の数は、 10本のくじから4本選んで並べる順列の数に等しい。

言い換えると、10本から4本を選んでA, B, C, Dの前に並べているのである。

つまり、


\begin{eqnarray} {}_1 \mathrm{P}_4 = 10 \times 9 \times 8 \times 7 = 5040 \end{eqnarray}

で5040通りある(かなり多い)。

これは、くじを引いて、さらにその引いた順番も考慮している。

つまり、Aが当たりくじを引く場合と言うのは1つ目に当たりくじがでる場合の数に等しい。

1つ目に3本の当たりのうち、どれかが選ばれれば良いので、 3本の当たりくじの本数とB, C, Dの3人が残りのくじを引く場合の数である\( {}_9 \mathrm{P}_3 \)をかけてやればよくて、


\begin{eqnarray} 3 \times {}_9 \mathrm{P}_3 = 3 \times (504) = 1512 \end{eqnarray}

となる。これは当たる場合の数だから、くじを引くすべての場合の数で割ることでAが当たりくじを引く確率が計算できる。

それは、


\begin{eqnarray} \frac{1512}{5040} = \frac{3}{10} \end{eqnarray}

となる。予想した通りである。


では、2番目以降にくじを引くB, C, Dが当たりを引く確率を求めていく。

Bが当たりくじを引くためには2番目に3本あるうちの当たりくじが並べられるような場合でなくてはならない。

それは3本ある当たりくじのうちどれかが2番目に並べられ、残りの9本を他の1, 3, 4番目に並べられる場合を考えれば良い。

ここで、Aが先に1本引いているから、9本の内から選べばいいのではないかと思うかもしれない。

しかし、今はくじを10本から4本を選び、並ばせる順列として捉えていて、4人が同時にくじを引いているような状況のためそうではないのである。

そうするとやはりBが当たりくじを引く場合の数も、


\begin{eqnarray} 3 \times {}_9 \mathrm{P}_3 = 3 \times (504) = 1512 \end{eqnarray}

となり、当たりを引く確率は


\begin{eqnarray} \frac{3}{10} \end{eqnarray}

となるのである。

ここまでくればおおよそ分かると思うが、CとDが当たりくじを引く確率も同様に計算されて、3/10となる。

このようにして、くじを引く場合、当たりを引く確率は順番に関係なく同じである。

つまり、「残り物には福がある」と言うのは残念ながら事実ではなく、残ろうが残らなかろうが福(当たり)を得る確率は順番に関係なく一緒なのである。



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