宝くじの期待値
カテゴリー:数学A
高校の数学Aでは確率を学ぶことで、1回の試行によって得られると期待される数値である期待値を計算できるようになった。
受験勉強や試験勉強として期待値を学ぶだけでは面白くないので、実社会でも役立つかもしれない期待値についてここでは考えて見る。
期待値はその名の通り、どのくらいの値が得られると期待できるかという数値である。
実社会では公営の賭け事があり、その賭け事(ギャンブル)がどれくらいの換金率なのか多くの人にとって興味のあるところだと思う。
ここでは、最もわかりやすい宝くじを1枚買うとどれくらいの金額が当たると期待できるか計算していこうと思う。
賞金 | 本数 | |
1等 | 700,000,000円 | 25本 |
1等の前後賞 | 150,000,000円 | 50本 |
1等の組違い賞 | 500,000円 | 4,975本 |
2等 | 15,000,000円 | 500本 |
3等 | 1,000,000円 | 5000本 |
4等 | 10,000円 | 500,000本 |
5等 | 3,000円 | 5,000,000本 |
6等 | 300円 | 50,000,000本 |
はずれ | 0円 | 444,489,450本 |
計 | 500000000本 |
上に示した表は2016年12月に行われた「年末ジャンボ(第704回全国)」の当選金額とその本数である。
販売枚数は500,000,000枚(5億枚)と公表されている。1等はなんと7億円である。
日本人の生涯賃金が大学卒で2億5千万円と言われているので、2回半くらいの人生を働かなくても良い計算になる。
この夢を掴もうと毎年多くの人がこぞって宝くじを購入するのだが、この宝くじは数学的に見るとどれくらいの勝算があるのだろうか?
1等が当たる確率は、上の表から簡単に、
\begin{eqnarray} \frac{25}{500000000} = \frac{1}{20000000} \end{eqnarray}
となる。2千万本に1本の割合である。
確率にすると、0.000005%である。
どのくらい低いか想像もつかないので、1回飛行機に乗った時に事故に遭う確率とされている0.0009%(世界全国の平均) と比較してみると宝くじの1等に当たる確率がいかに低いかわかる。
もうこれだけで、宝くじを買うのがいかに無謀か想像がついてくるのだが、他の等に当選することもあるので、とりあえず宝くじの期待値を計算してみようと思う。
上の表から、2016年の年末ジャンボ宝くじの期待値は以下のように計算できる。
\begin{eqnarray} \frac{25}{500000000}& &\times 700000000 + \frac{500}{500000000} \times 15000000 + \frac{4975}{500000000} \times 500000 \\ & & + \frac{500}{500000000} \times 15000000 + \frac{5000}{500000000} \times 1000000 + \frac{500000}{500000000} \times 10000 \\ & & + \frac{5000000}{500000000} \times 3000 + \frac{50000000}{500000000} \times 300 + \frac{444489450}{500000000} \times 0 \\ & & = 149.975 \end{eqnarray}
つまり、1本の宝くじを買うと、149.975円の当選金が期待できるのである。
ここで、重複当選と良い、例えば2等にも6等にも当たることがあるのだがそれは無視した。(無視しても影響がないくらいその効果は小さい)
これをみるとどうだろうか?宝くじの販売金額は1本300円である。期待値を優に超えている。
つまり、宝くじを買っても半分くらいは損することが期待されるということである。
さらに、確率の性質上、購入本数が増えれば増えるほど当選金額(払戻金額)の1本あたりの平均は先ほど求めた期待値に近づいていく。
よって、宝くじを買えば買うほど当たる確率が上がると思っている人が多いと思うが、実は数学的には本数が少なければ少ないほど、 期待値には近づかないので、購入金額に対する当選金額の比率を上げたければ、購入本数を少なくする方が効率的なのかもしれない。(当選の確率が著しく低いのでここは難しい議論)
このように基本的に賭け事(ギャンブル)を数学的に見ると、賭けたお金に対してその期待値が上回ることはまずない。
これは、購入金額と期待値の差額分を販売元(ギャンブルで言えば親)の取り分とするからである。
自ら進んでお金をあげる人はいないということである。
競馬場でも、買った人が喜んでいる場面を見ることが多いが、実はその分必ず誰かが負けているのである。
ちなみに競馬の期待値は100円の購入金額に対して70円程度と言われており、やはり損するということがわかる。
この話は数学からは大きく離れることになるのだが、賭け事をする場合にはこう言った考察をしてみるのも良いのではないかと思う。