スポンサーリンク

静電誘導

カテゴリー:電磁気学


 

2つの物体を用意する。片方の物体がもう片方の物体から電子を強制的に奪うと、奪われた物体は正に帯電する。 逆に、電子を強制的に与えられた物体は負に帯電する。

帯電した物質は、他の物質に接触することで電子を流すか、電子を取り戻さないと帯電したままである。

帯電したまま動かずに物質内に止まっている電気静電気という。

 

帯電させた物質を導体に近づけると面白いことが起こる。

図1のように、正に帯電した棒を導体に近づけると、帯電した棒に近い側に自由電子が引き寄せられる。

すると反対側は電子が少なくなってしまうので、相対的に正になる。

この静電気によって、電子が引き寄せられる(または遠ざけられる)現象静電誘導と呼ぶ。


fig1-4-1.jpg
図1 導体に近づけられた帯電体


 

静電誘導を可視化する装置として、箔検電器が有名である。

図2に示す装置が箔検電器で、瓶の中に金属箔があり、それと金属板がつながっている(左図参照)。

金属板と金属箔は一つの導体になっている。


fig1-4-2.jpg
図2 箔検電器に近づけられた帯電体


金属板に、帯電した物質を近づけると静電誘導によって金属板に電子が引き寄せられる。

すると金属箔側は電子が少なくなってしまい、正の電荷が溜まる。

(実はこれは電子が金属箔の部位に少なくなってしまい、相対的に正に帯電しているのである。ここではわかりやすいように正の電荷が溜まったとして考える。)

すると、正の電荷同士は引き離す性質があるので、金属箔が開く。

帯電した棒を引き離すと箔検電器の電荷は均一になり、金属箔は閉じる。

このようにして、箔検電器を使って静電誘導を可視化することができるのである。


誘電分極については他のページで説明する。



箔検電器で宇宙線を発見した?


静電誘導を見るだけであったらここまでの実験で良いのだが、箔検電器を使った実験にはまだ続きがある。

帯電した棒を近づけたままで、箔検電器の金属板をアースする(手で触れても良い)と、 導体である地球から電子が、正に帯電した棒に引き寄せられ集まってくる。

すると、金属箔側にも電子が供給され、正に帯電されていた金属箔は中性になり、閉じる。

このとき、箔検電器は元の状態より電子が多い状態になる。

この状態でアースを止め、帯電した棒を離すとどうなるだろうか?

帯電した棒はもうないので、自由電子は箔検電器に満遍なく分布するようになる。

地球から供給された分、元の状態の箔検電器より電子が多いので、箔検電器は全体が負に帯電し、金属箔は再び開いてしまうのである。


fig1-4-3.jpg
図3 箔検電器に近づけられた帯電体


実際にこれをやってみると、帯電した棒を離した瞬間に金属箔は開くのだが、その後ゆっくりと閉じてしまう。 これを見た科学者は、箔検電器の中の空気が電離(空気の分子が電子とイオンに分けられること)されて正の電荷が供給されたのではないかと考えた。 さらにこの電離は、地球内部から発せられ、物質を通り抜けられるなんらかのビームによって引き起こっていると考えた。 そこで、気球に箔検電器を乗せて、高高度まで箔検電器を持っていくことにした。 先ほどの仮説が正しければ、ビームを発している地球から遠ざかるので、上空では箔検電器の金属箔は開いたままでいると考えたのである。 しかし、実際にこれをやってみると、金属箔は上空であればあるほど、閉じるスピードが早くなったのである。 科学者は仮説に反するこの結果をどう解釈していいか悩んだ。

実は、この電離するビームは現代では「宇宙線」と呼ばれており、地球からではなく宇宙から飛んできていたのである。 つまり気球で宇宙に近づけば近づくほど、箔検電器内の空気は電離されやすくなるのである。 この時、科学者達はまだ気づいていなかったが、すでに宇宙線の存在はわかっていたのである。


スポンサーリンク