ベクトル
カテゴリー:物理数学
ベクトルとは、『向きと大きさを持つ量』である。
有向線分という矢印で表され、矢印の向きがベクトルの「向き」を表し、矢印の長さがベクトルの「大きさ」を表す。
物理学の中には、「向き」と「大きさ」を表すベクトルに対して、「大きさ」のみを表すスカラーがある。
例えば、質量、体積、面積、温度、密度は「向き」を持たないのでスカラー量であり、速度、加速度、電場、磁場、力、圧力、変位などは「大きさ」に加えて「向き」を持つのでベクトル量である。 ベクトル計算は、物理学を扱う上で最も基本的なことの一つなので、ベクトルの理解は重要である。
図1. Aベクトル
図1のような点Pから点Qへ向かう矢印Aを考える。
この矢印Aこそがベクトルと呼ばれるものである。
この矢印が有向線分であり、点Pを始点と呼び、点Qを終点と呼ぶ。
このベクトルは点Pから点Qに向かうので、\( \vec{PQ} \)や矢印の通称を取って\( \vec{A} \)と表され、「PQベクトル(ベクトルPQ)」と呼ぶ。
主に大学では、矢印で記さず太字の\( \bf{A} \)と表記することが多い。 これらはどの表記でも数学的には間違っていないが、多くの場合は太字で示されるので、ここでもベクトルは統一して太字で示す。 ベクトルの大きさはベクトル記号に絶対値を取って、\( | \bf{A} | \)と表す。
\( P \)の座標を\( (x_1, y_1) \)、\( Q \)の座標を\( (x_2, y_2) \)とすると、 \( \bf{A} \)の成分は\( (x_2-x_1, y_2-y_1) \)で表される。
これは、\( {\bf A} \)は\(x\)方向に\( x_2 - x_1 \)、\( y \)方向に\( y_2 - y_1 \)進むということを意味している。
大きさは三平方の定理より
\begin{equation} |{\bf A}| = \sqrt{(x_2-x_1)^2 + (y_2-y_1)^2} \end{equation}
である。
ベクトルの活用
ベクトルは数字と同じく足し算、引き算、掛け算ができる。
ベクトルの場合は、大きさだけでなく向きを持つため、通常の足し算、引き算、掛け算を行うのではなく、「向き」と「大きさ」の足し算、引き算、掛け算を行わなくてはならない。
これらのベクトルの足し算・引き算とベクトルとスカラーの掛け算、ベクトルとベクトルの掛け算については別のページで紹介する。
これらのベクトルの演算は、力の合成や電場、磁場内を運動するときの荷電粒子の運動などの場面で活躍する。
では、次にベクトルの簡単な振る舞いについて紹介したいと思う。
「向き」と「大きさ」が同じベクトル
図2. 平行なベクトル
図2に示す、\( \bf{A} \)に平行な\( \bf{B} \)を考える。\( \bf{A} \)と\( \bf{B} \)は向きも大きさも同じであるので、同じベクトルということができる。
つまり、
\begin{equation} {\bf A} = {\bf B} \end{equation}
である。
よって、「向き」と「大きさ」が等しいベクトルはすべて同一のベクトルである。
「大きさ」が同じで「向き」が反対のベクトル
図3. 大きさが同じで向きが反対のベクトル
図3に大きさが同じで向きが反対なベクトルを示す。向きが反対と言うことは反対向きに進むということを意味する。
これを逆ベクトルといいマイナスを使って表す。
よって、「大きさ」が同じで「向き」が反対のベクトルは互いに符合が異なる。