調和振動子の力学的エネルギー:ばねにつながれた質点
図1のようにばねにつながれた質点が調和振動する場合の力学的エネルギーについて考える。 基本的なことではあるが、力学的エネルギー\( E\)は運動エネルギー\( T\)とポテンシャルエネルギー\( U \)の和で表される。 \begin{eqnarray} E = T + U \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (1) \end{eqnarray} 力学的エネルギーは力学的エネルギー保存の法則により、時間によらず常に一定である。
図1. ばねにつながれた質点
平均のエネルギー
式(7)と(8)でポテンシャルエネルギーと運動エネルギーの時間変化が分かった。 これらをよく見てみると、\( t=0 \)つまり、質点が最も釣り合いの位置から遠い場所にある時、\( U= \frac{1}{2} k A^2 \)、\( T=0\)となることがわかる。 (この時、\( \alpha_0 =0 \)とした。) また、\( t = \pi/2 \omega_0 \)の時、これはちょうど質点が\( x=0 \)の場所にいる時を示している。 この時は\( U=0 \)、\( T = \frac{1}{2} k A^2 \)となる。 このように、ポテンシャルエネルギーと運動エネルギーの和は常に一定ではあるが(力学的エネエルギー保存の法則)、一方のエネルギーが最大となる時、もう一方のエネルギーは0となるのである。 このように、ポテンシャルエネルギーと運動エネルギーは力学的エネルギーという決まった量を常に互いにキャッチボールのように受け渡しあっているのである。 では、このように時間変化するポテンシャルエネルギーと運動エネルギーではあるが、その平均を取るとどのようになるのであろうか? ここでは、それを見ていこうと思う。
質点は周期的運動を行うので、平均のエネルギーを求めるには、1周期で獲得するエネルギーを1周期に要する時間で割ってやればいい。まずはポテンシャルエネルギーの時間平均\( \overline{U} \)について求めると、 \begin{align} \overline{U} &= \frac{1}{2\pi / \omega_0} \int_{0}^{2\pi/\omega_0} \frac{1}{2} k A^2 \cos^2 (\omega_0 t + \alpha_0)\ dt \\ &= \frac{kA^2 \omega_0}{4 \pi} \int_{0}^{2\pi/\omega_0} \frac{1}{2} \left\{ 1 + \cos\left( 2\omega_0t + 2\alpha_0 \right) \right\} dt \\ &= \frac{1}{4} k A^2 \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (10) \end{align} となることがわかる。ここで、\( \cos^2\theta = \frac{1}{2}(1 + \cos2\theta)\)の公式を使った。 また、\( \cos\left( 2\omega_0t + 2\alpha_0 \right) \)は周期関数であるので、1周期にわたって積分すると0になるのである。つまり、ポテンシャルエネルギーの時間平均は力学的エネルギーのちょうど半分となることがわかる。 同様の計算を運動エネルギーについても行うと、 \begin{eqnarray} \overline{T} = \frac{1}{4} kA^2\ \ \ \ \ \ \ \ \ (11) \end{eqnarray} となることがわかる。(ポテンシャルエネルギーの場合とほとんど同じ計算なので、詳しい計算は省く。) このように、運動エネルギーの時間平均も力学的エネルギーの半分で表されるのである。
以上から、ポテンシャルエネルギーと運動エネルギーは、その最大値は力学的エネルギーと等しくなり、 最小値は0となる。さらに、平均値は力学的エネルギーの半分で表されるのである。
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