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テイラー展開

カテゴリー:物理数学


テイラー展開とは、「無限界微分可能な\( f(x) \)という関数のべき級数を得るものである」と定義されている。

そうは言っても、この定義だけだと難しいので、まず初めにもっと簡単に説明する。

例えば、無限に微分可能な関数 \( f(x) \)が\( f(x) = 1.000003 \)だったとする。

この時、 \( f(x) \)の10乗つまり、\( f(x)^{10} \)はいくつになるだろう?

電卓やエクセルなんかを使って、\( (1.000003)^{10} \)と単刀直入に計算すればいいのだけれど、これは美しくないし、もっと数学的な解法を導きたい。

だいたいの予測をつけてみると、1.000003は極めて1に近いので、\( (1.000003)^{10} \)も1に極めて近くなるのではないだろうか?

言い換えれば、


\begin{equation} (1.000003)^{10} \approx 1 \end{equation}

ではないだろうか?

まずこう考えることを0次の近似と呼ぶ。


では、0.000003の部分はどこに行ったのだろう?

もう少し、深く考えてみると、10乗って10回同じ数を掛け合わせることだから、0次近似に0.000003を10回かけたものを足し合わせた、


\begin{equation} (1.000003)^{10} \approx 1 + 10 \times 0.000003 = 1.00003 \end{equation}

くらいじゃないか?と考えることができる。

これを1次近似と呼ぶ。

つまり、\( x=0.000003 \)として、1次近似まで行うと


\begin{equation} (1 + x)^{n} \approx 1 + n x \end{equation}

として展開できるという意味である。

この技は\(x\)が十分小さい時に使えて、これをテイラー展開と呼ぶ。

\( f(x) \)上の点 \( f(a) \)から少し離れた点\( x \)の値、\( f(x) \)はテイラー展開によってわかるということである。



 

次にもっと一般的な場合を考えていく。

無限微分可能な関数 \( f(x) \)上の点\( a \)から微小距離離れた点\( x \)における\( f(x) \)の値はテイラー展開によって以下のように表すことができる。


\begin{equation} f(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)} (a)}{n!} (x - a)^n \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (1) \end{equation}

である。

この時、\(n=0\)で \( f(x) = f(a) \)と定義する。

この式を展開すると


\begin{equation} f(x) = f(a) + f’(a)(x-1) + \frac{1}{2!} f’’(a)(x-1)^2 + \frac{1}{3!}f’’’(a)(x-1)^3 + \cdots \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (2) \end{equation}

となるのである。

この式を点\(a\)まわりの\( f(x) \)のテイラー展開と呼ぶ。



マクローリン展開


 

特に原点周り(\( a=0 \))でのテイラー展開


\begin{equation} f(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)} (0)}{n!} (x)^n \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (3) \end{equation}

マクローリン展開と呼ぶ。



微小距離ってどのくらい??


では、点\( x \)が点\( a \)からどの程度離れてよいのであろうか?

この限界まで離れられる距離を収束半径と呼ぶ。

もし、収束半径以内であれば、2次、3次、4次…となるに従って、値は小さくなっていく。

もし、収束半径以上であれば、高次になればなるほど値が大きくなってしまい発散してしまう。

テイラー展開を使う場合の多くは原点周りで展開することが多い。

この場合に収束半径を確かめることは、その関数へのテイラー展開の有効性を確かめる上で重要なことである。

収束半径はどんな関数をどこの周りに展開するかによって異なる。

ちなみに、三角関数(\(\cos,\ \sin\))、指数関数(\(e^x\))の収束半径は無限大であるので、どこでもテイラー展開(マクローリン展開)をすることができる。

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