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光の強度

カテゴリー:実験物理学


光は、「明るい」や「暗い」と強さが表現される。実際には、どのように光の強さは表現されるのであろうか。 我々は、光は電場と磁場が互いに直交して進んでいる電磁波であることを知っているので、少し踏み込んで光の強度を求めてみる。

 

光の強さは、その伝搬方向に垂直な単位面積を単位時間に通過するエネルギーから求めることができる。 電磁波の伝搬方向に垂直な単位面積を単位時間に通過するエネルギーはポインティング(Poynting)ベクトルで与えられる。

ポインティングベクトルとは、エネルギーの移動を表すベクトルである。 電磁波のポインティングベクトル\( {\bf S} \)は、


\begin{eqnarray} {\bf S} = {\bf E} \times {\bf H}\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (1) \end{eqnarray}

である。このポインティングベクトルは、単位面積を単位時間あたりに横切るエネルギー量であって、光の強さではないので注意する。 マクスウェル(Maxwell)方程式から、


\begin{eqnarray} H = \sqrt{\frac{\epsilon}{\mu}}\ E\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (2) \end{eqnarray}

の関係がある。ここで、\( \epsilon \)、\( \mu \)はそれぞれ誘電率と透磁率である。 この関係を使って、ポインティングベクトルをスカラー量に直すと、


\begin{eqnarray} S = \sqrt{\frac{\epsilon}{\mu}}\ E^2\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (3) \end{eqnarray}

となる。ここで、光の進行方向をz軸に取って、直交成分をx軸、y軸とすると、電場\( E\)の成分、\( E_x\)、\( E_y \)は、


\begin{eqnarray} E^2 &=& E_x^2 + E_y^2 \\ E_x^2 &=& A_x^2 \cos^2 \left( \omega t + \phi_x \right) \\ E_y^2 &=& A_y^2 \cos^2 \left( \omega t + \phi_y \right) \end{eqnarray}

で表される。

ここで、\( A_x \)、\( A_y \)は電場のx方向とy方向の振幅である。 \( \phi_x \)、\( \phi_y \)は電場のx方向、y方向の位相であるが、後で消えるので今は気にしなくて良い。

\( \omega \)は光の角振動数である。 \( E_x \)、\( E_y \)を式(3)に代入し、光の振動数\( \nu = \frac{ \omega } {2 \pi} \)に対して十分長い時間\( T \)で平均すると光の単位断面積を単位時間に通過するエネルギーを求めることができる。


\begin{eqnarray} \overline{S} &=& \sqrt{\frac{\epsilon}{\mu}}\ \left( \int_0^T A_x^2 \cos^2 \left( \omega t + \phi_x \right)\ dt + \int_0^T A_y^2 \cos^2 \left( \omega t + \phi_y \right)\ dt \right) \\ &=& \sqrt{\frac{\epsilon}{\mu}}\ \left( \frac{1}{2}A_x^2 + \frac{1}{2}A_y^2 \right) + \frac{c}{T} \sqrt{\frac{\epsilon}{\mu}}\ \left( \frac{1}{4\omega} \sin\left( \omega T + \phi_x \right) + \frac{1}{4\omega} \sin\left( \omega T + \phi_y \right) \right)\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (4) \end{eqnarray}

この時、\( T \)は、振動数に対して十分長いので、式(5)の第二項は0に収束し消える。 光の強度は、この単位面積を単位時間に通過するエネルギーに光の速度\( v = c/n \)をかけたものになる。 光の強度とは、単位体積あたりのエネルギーを表しており、エネルギー密度である。

光の強度Iは、


\begin{eqnarray} I &=& c \overline{S} = \frac{1}{2} \frac{c}{n} \sqrt{\frac{\epsilon}{\mu}} E_0^2 \\ &=& \frac{1}{2} \epsilon E_0^2 \ \ \ \ \ \ (5) \end{eqnarray}

と求められる。 ここで、\( E_0 = \sqrt{ A_x^2 + A_y^2 } \)で表される電場の振幅である。 このことから光の強度は、電場の振幅の2乗に比例することがわかる。

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