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電気双極子モーメント

 近接した正負の電荷のペアのことを電気双極子と呼び、周りには電場を作る。 自然界にある多くの物質が電気的に中性であると言われているが、分子レベルで厳密に見ると電荷が偏っている。 偏った電荷はその粘性や磁気的、電気的な性質に影響を及ぼす。 このようなことから、正負の電荷をペアで考えることは物質の性質を決定する際に非常に重要になってくる。 さらに、電気双極子は自身が電場を作るだけでなく、外部に印加された電場によって力を受ける。 この電気双極子は電気双極子モーメントを持つ。 色々な教科書などには、唐突に電気双極子モーメントという言葉が出てきて、何のことだが想像し難いが、 電気双極子モーメントとは、両端に電荷がついていて、向きが決まっている棒を想像してもらうのが近いかもしれない。 (この想像が物理的に正しいかは、とりあえずは置いておくことにする。)

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図1. 近接した電荷

図1のように置かれた正負の電荷を考える。 正電荷の座標は\( (a,\ 0,\ 0) \)、負電荷の座標は\( (-a,\ 0,\ 0) \)である。 ここで、図1では縦軸を\( x \)軸としていることに注意する。 これらの電気双極子が作る電場は以下のように表される。 \begin{eqnarray} E_r &=& \frac{2p \cos \theta}{4 \pi \epsilon_0 r^3} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (1) \\ E_{\theta} &=& \frac{p \sin \theta}{4 \pi \epsilon_0 r^3} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (2) \end{eqnarray} ここで、式(1), (2)は極座標で表示されている。 また、電荷どうしの距離\( 2a \)より十分に遠い距離(\( r>>a \))を仮定した場合の電場である。 この場合、\( p = 2 a Q \)となる。 この\( p \)のことを電気双極子モーメントと呼ぶ。 電気双極子モーメントはベクトルで表すことができて、図1の負電荷から正電荷までのベクトルを\( {\bf d}\)ベクトルとすると、 \begin{eqnarray} {\bf p} = Q{\bf d} \ \ \ \ \ \ \ \ \ (3) \end{eqnarray} とすることができる。もちろん、\( {\bf p} \)ベクトルの大きさは、\( |{\bf p}| = Q|{\bf d}| = 2Qa \)である。 電気双極子モーメントが作る電場(式(1)と(2)で表される電場)は図2のように示される。

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図2. 電気双極子モーメントが作る電場

以上のように電気双極子が電場を作ることがわかった。 では、次に外部から電場を与えられると電気双極子は影響を受けることを見ていこうと思う。 ます、電気双極子を一様な電場の中に置く(図3)。

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図3. 電気双極子モーメントと電場

すると正電荷は\( F_+ = Q{\bf E} \)の力を\( F_- = -Q{\bf E}\)の力を受ける。 当然ながら電荷\( Q \)は同じでその符号が違うだけなので、電荷にかかる力は大きさが同じで、向きが反対なだけである。 このような向きが反対・平行で同じ大きさの力は偶力と呼ばれる。 電荷のペアである電気双極子としてみた場合、電気双極子にかかる合力は0となる。

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図4. 電気双極子モーメントが電場から受ける力

もし、電場に対して電荷のペアが角度\(\theta\)を持って置かれていた場合、それぞれの電荷にかかる力は平行であるものの直線上に並ばない。 こういった場合は電気双極子は回転をする。 この時、偶力のモーメントを計算できる。 モーメントとは、位置ベクトル\( {\bf r} \)と力のベクトル\( {\bf F} \)として、\( {\bf r} \times {\bf F} \)と表される。 モーメントについてここでは詳しく述べないが、\( {\bf r} \)にある物体に力\( {\bf F} \)がかかると原点から見ると物体は回転しているように見える。 \( {\bf r} \times {\bf F} \)からもわかるが、\( {\bf r} \)と\( {\bf F} \)が直交している場合は最も効率的に物体を原点周りに回転させることができる。 負電荷と正電荷のモーメント\( {\bf N}_+ \)と\( {\bf N}_- \)を計算すると、 \begin{eqnarray} {\bf N}_+ &=& {\bf r}_+ \times {\bf F}_+ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (4) \\ {\bf N}_- &=& {\bf r}_- \times {\bf F}_- \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (5) \end{eqnarray} である。これらを足し合わせた電気双極子の偶力モーメント\( {\bf N} \)は、 \begin{eqnarray} {\bf N} &=& {\bf N}_+ + {\bf N}_- \\ &=& Q \left( {\bf r}_+ - {\bf r}_- \right) \times {\bf E} \\ &=& Q {\bf d} \times {\bf E} \\ &=& {\bf p} \times {\bf E} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (6) \end{eqnarray} と電気双極子モーメントを使って表されるのである。

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図5. 偶力モーメント

この偶力モーメントは図5のように電場と電気双極子モーメントとのなす角\( \theta \)を小さくする方向に働くのである。

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